愚者はのらくら月へゆく

久間健裕の日々のあれこれ

映画『犬神家の一族』を見た。

怪奇小説や土着ホラーが流行っているので、その元祖を。

犬神家の一族』1976年

美女設定を軽々飛び越える島田陽子
あらすじ

製薬会社として財を成した犬神家の当主・佐兵衛が亡くなった。佐兵衛は生涯正妻を持たず、母親の違う三人の娘と婿養子、孫息子達がその最後を看取った。残された一族の者達の関心はその莫大な遺産の相続先に集まるが、顧問弁護士の古舘が遺言状は一族全員が揃わない限り開封することは出来ないといい、皆は長女・松子の息子で戦地から復員したきり戻らない佐清の到着を待つこととなった。
時を同じくして、犬神家の内部調査の依頼を受けて東京から私立探偵の金田一耕助がやってくる。が、犬神家に引き取られた養女の野々宮珠世の乗った手漕ぎボートが沈められたり、金田一に依頼をした古舘の助手の若林が何者かに毒殺されたりと、遺産の相続争いに暗雲が立ち込めていく。そんな中、戦地で負った傷を隠すためにゴムマスクを被った佐清が母の松子と共に到着。遺言状が開封されることとなった。金田一は古舘の依頼で、若林の代理人として遺言状の開封に付き添うことになる。
その遺言状には《犬神家の家宝及び財産全てを佐兵衛の恩人・野々宮大弐の孫娘である珠世に、孫息子の佐清・佐武・佐智の中から結婚相手を選ぶことを条件に相続させる。珠世が相続権を失った場合や相続者が死んだ場合は、残された孫息子及び(佐兵衛の愛人であった)青沼菊乃の息子・静馬に分配する》という旨が書かれていた。三人の娘とその息子達はその内容に憤慨し、どうにか遺産をせしめようとそれぞれに動き回り始めるが、ひとりまた一人と残忍な方法で殺害されていってしまう。金田一はその卓越した洞察力と推理力で、犬神家の一族に隠された秘密と事件の真相に辿り着いていく。

感想

全体的に薄暗く湿っぽい雰囲気、一族の欲と陰謀にまみれた遺産相続争いという設定、ダリオ・アルジェントばりの血飛沫殺害シーンなど、邦画特有の重苦しさやホラー要素もありつつ、金田一と宿屋の女中や警察署長のコミカルなやり取りが一服の清涼剤の役割を果たしていたりと、エンタメとしてかなり緩急のついている映画で、公開から50年近く経った今でも遜色なく楽しめる。そう、エンタメだった。ミステリーとして見ると腑に落ちない点がポロポロと出てきてしまうけど、画のインパクトや展開力があるのでさほど気にならずに見れた。欲を言えば複雑に入り組んだ犬神家の一族家系図が初見だと少し分かりにくいので、そこさえスッキリ説明がなされていればもっとスッと入り込めたんだろうな。

余談として、大好きなドラマ『TRICK』シリーズに「黒門島」や「六つ墓村」など金田一耕助シリーズのパロディが盛り込まれているのは知っていたけど、警察署長がざっくり推理を披露する際のポーズがそのまま矢部警部補の推理ポーズに引用されているのは今作を見て初めて知った。こういう発見があると余計に楽しい。