愚者はのらくら月へゆく

久間健裕の日々のあれこれ

日本のラジオ『蛇ヲ産ム』を見た。

日本のラジオ『蛇ヲ産ム』

razio.jp

フェイクドキュメンタリーQ、雨穴、梨、背筋などの作り手の登場によって令和に新たなムーブメントが巻き起こったホラー業界。個人的にはそこに日本のラジオも加えて欲しいと思っている。なぜなら過去に見た作品が猟奇ホラーだったりコズミックホラーだったりしたからだ。(別にホラー専門の劇団というわけではない)

今作は主宰の屋代さん曰く「オルタナティブ和ホラー」。とある地域の弁当屋で働く女性の身に起きた違和と、その周辺の人々の話が語り手によって淡々と描写されていく。それこそネットホラーの質感というか、洒落怖のスレッドを読み進めていくような感覚だった。ジャンプスケア的な怖がらせ方はないし、人怖とも少し違う。それでもしっかり恐ろしい。不穏が音を立てずじわじわと世界を蝕んでいき、気づいた時にはもう手遅れ、逃れようのない恐怖に囲まれてしまっている。

日本のラジオの作風として、唐突に物語の幕が閉じられるというのがあるが、今作はそれが一番恐ろしく感じた。今まで書き込みをしていた>>1が急に現れなくなったみたいな、それも込みで嫌だった。怖いと言うより、嫌。

あと、俳優陣の予断を許さない音の発し方や表情の動きが本当に生きている人間とは思えなくて非常に気持ちが悪かった。お見送り時間で素の俳優さん達を見た時に、安心しつつもちょっと余韻が削がれた感じがしてしまったかな。あのまま何方とも触れ合わずに、あの世界にいた人たちはもうどこにもいないという実感だけを持ち帰ることも、今作の味わいとしては良かったように思う。

パンフ、買えばよかったかなと後悔。