愚者はのらくら月へゆく

久間健裕の日々のあれこれ

びいどろ。

吹き荒ぶ風が、がらんどうな容れ物を通り抜ける。

隙間風の音がやけに耳障りで、思わず耳を塞いでみるが、音はずっと聞こえている。

その時、音は私の中で反響しているのだと気づくのだ。

30年近く生きてきた結果、私の身体は空っぽだった。

その不安を拭い去ろうと、ありとあらゆるものを詰め込もうとした。

しかし、膨れていくのは頭ばかりで、肝心の中身はずっとすかすかのまま。

何一つとして、身になることはなかった。

頭でっかちな空洞。

その姿は、まるでびいどろのようだった。

風が吹くたびに、これ見よがしに頭をペコペコ、ペコペコと鳴らすばかり。

自ら音色を奏でることはない。

 

ある日、少女はびいどろを手にした。

きっと初めて見たのだろう。

ぷーっ!と、思い切り吹いた。

ぱぁん。

びいどろは、破裂してしまった。

少女は悲しい顔をした。

仕方ないよ、何も知らなかったんだもの。

彼女はきっと、もうびいどろを破裂させないだろう。

それでいい、それでいいのだ。